お母さんは本を読む時間がない

”ははがよむ” あおきともこのブログ

7.「おかあさん、ちょっと本読んできていいよ」スタート

自分たちで子どもを見守れるか

  公園イベントが終わり、私たちは次なるアクションを考えた。知ってもらうための活動も大切だが、やっぱりお母さんたちには実際に「自分のための本の時間」を味わってもらいたい。ということで、ははがよむ スタッフが子どもさんを見守っている間、一人で図書館に行ってきていいよ、という活動をやってみることにした。

 

 私たちの地域の図書館は、どの館も公民館に併設されている。公民館の部屋で私たちが子どもを見ている間に、お母さんたちが図書館へ行ってくる。これは、一人で妄想しているときから何度か考えたプランだった。

 しかし、実際にやるとなると、想像するだけで不安が尽きない。子どもは親が部屋から出ていったら泣いて後を追うのではないか。もし子どもの具合が悪くなったり、万が一けがしたりしたら? 子どもを育てた経験があるとはいえ、資格もない私たちに子どもを一時でも託してくれるだろうか。

 

 こうした不安を一つひとつ、つぶしていった。子どもの様子が変わったときなどは、同じ建物にいるのだから、すぐに連絡を取れるように電話番号を聞いておく。飲み物やオムツ、お気に入りのものなど、子どもが心地よく過ごすためのものは記名して一緒に預けてもらう。アレルギーの観点から、おやつ類は出さない。参加している親子と預かる側が保険に入る……。

 

 自分たちがこれまで体験した「託児」経験や周りの意見を参考に、入念に考えて、まずは近い人に声をかけてお試し会を開催した。子どもを見ている部屋は、和室を借りた。おかあさんたちの時間は30分。

 

f:id:aotomo8846:20200627120854j:plain

 大人3人で5人の子どもたちにピッタリくっつき、まさに「見守り」をしてみると、月齢によって動きも興味も違い、同時に2人を見ることすら大変で、大わらわだった。あたふたしている間におかあさんたちが戻って来た。

 あっという間だったと笑いながらも、アンケートには「子どもと離れて過ごす貴重な時間だった」「子どもが楽しそうで、安心して預けられた」「またあるなら利用したい」と書いてくれた。

 

 このお試し会をもとに、内容を精査した。おもちゃは各家庭で使わなくなったものを寄せ集めたら、十分な数になった。音が少なくて安全なものに絞り、小さなパーツや危ないものは排除した。絵本も持参したり、図書館から借りたりできる。おかあさんたちには30分間、まるまる図書館で過ごしてきてもらう。

 

 呼び掛けたいことばは「お母さん、ちょっと本読んできていいよ」。メンバーがポンっと出してくれたこの一言が対象者と内容を簡潔に表していたので、そのままタイトルにした。チラシはロゴマークを作ってくれた友人がデザインしてくれて、今回もスッキリした魅力的なものになった。

 f:id:aotomo8846:20200627121508j:plain f:id:aotomo8846:20200627121030j:plain

 

有料の壁

  始めるときに私がこだわったのは、チームははがよむ が子どもを見守るという重要な任務を担うにあたり、保険には必ず入ってもらうし、備品を買うときにも持ち出しは無しにすること。公民館で行う以上、人件費は出せないが、できれば薄謝も渡したい。そうしなければ、とても続かないと思った。

 つまり、どんなに安くとも有料にする、ということだった。有料にすることで、こちらの責任感を感じても欲しかった。

 公民館では営利の企画は行えない。準備のために集まり、チラシを作ったり配ったり、細切れの時間を最大限に使って他所のお母さんたちの時間を作っているのだから、営利なわけがない。そうは思うけれど、そもそもは自分たちがやりたくてやっているのだし、集まること自体が楽しいわけだから、とにかくやってみよう、となった。

 

 福祉的な観点のサービスを個人が行う場合はボランティアが基本になってしまうのがやるせなかった。もしこれが少しでも仕事になるのなら、やりがいをもってすべてを注ぎ込むのに。調べてみると、解決する方法は私たちがNPOや社団法人を作るという方法があった。

 個人からチームになって間もない活動にとって、それはあまりにも遠い響きだったけれど、本を読んだりして頭の片隅に引っ掛けておくことにした。ともあれ、まずは公民館にダメと言われない形で自分たちなりにやってみようと、チラシ配りに精を出した。

 

 定員(子ども)6人に対して、スタッフ3人。料金はお茶と保険込みで500円。チラシは公民館の他、子育て支援施設やスーパーの掲示板、親子連れの来るカフェなど、自分たちが子育ての中で行った場所を中心に、思いつく限り置いて回った。

 こうして「私なら、このチラシを見たら絶対に行くね!」と自信満々で、初回を待ったのだった。