お母さんは本を読む時間がない

”ははがよむ” あおきともこのブログ

5.人と会って話していたら「ははがよむ」ができた

一人の時間、しかも毎日

 

 ご意見ボックスに「託児があったら嬉しい」と書いて入れて以来、図書館へ行くたびに掲示板をチェックしていたが、回答はなかなか貼り出されなかった。

 

 もやもやしながらも、子どもは元気に育っていく。

 こうして「子どもを生んだら本を読む時間がない」と書いている私だが、子どもへの愛おしさが少しも減っていかないことに毎日(今でも)驚き続けている。子どもがかわいいことと、自分の時間が必要なことは、私の中では少しも矛盾しない。

 「自分の時間がほしいな」「ゆっくり本が読みたいな」「何かできないかな」と思いながらも、子どもの成長に驚き、面白く眺め、一緒に遊ぶのを楽しみながら、その時期になれば着々と幼稚園情報を集めた。人より動きは遅れながらも、3歳の春に子どもは無事タンポポ組の ”タンポポさん” になった。

 

 こうしてまさに4年ぶりの一人時間が訪れた。しかも毎日! 

 初めの数日はフワフワと心もとない気持ちを味わったが、子どもは子どもで楽しく過ごしていることが窺えると、たちまち羽が生えたように身軽になった。私は私で一人出かけたり、在宅の仕事を受けたり、新しく人と知り合ったりと、忙しく充実し始めた。

 

 そうはいっても親の出番が多い幼稚園だったので、日々の半分(またはそれ以上)は園に費やされた。しかしこの負荷は自分がそれを承知で選んだこともあり、それほど苦痛を感じずにやり通した。
 幼稚園は文科省の定める範囲の中で各園が個性というか差別化を打ち出していることが多く、保護者はいくつかの選択肢の中から子どもや家庭状況に合った園を選ぶ。つまり、親同士の価値観がそれなりに重なることが多い(もちろん、そうならないこともある。もちろん)。

 子どもが通った園はその傾向が割と顕著で、親同士の交流もさかんだった。私が知り合ったお母さん(お父さん)たちはみなとても気持ちの良い人たちで、それぞれの得意を出し惜しみせず各所で活かし、助け合い、大笑いできる関係だったこともあり、幼稚園時代は楽しく忙しく過ぎていった。

 

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人に話して見えてきた

 

 ある日、園の文集作りのために公民館で切り貼り作業をしながら、私は一緒にいた2人に何気なく、例の「本を読む時間がなかった」話をした。

 ”幼稚園母” 期間中も「何かできないか」は絶えず考え続けていたから、地域活動で活躍している人や企業サポートをしている人と話す機会があったときに口に出したことはあったが、園のお母さんにそうした話をするのはよく考えれば初めてだった。

 園の世界に馴染まない話をしてしまっただろうか、引かれてしまったかも、と引っ込めたい気持ちにかられたが、2人は驚きながらも深く共感してくれた。

 2人にとって必要なのは必ずしも本ではなかったけれど、「わかる」と言ってもらって、私にとっての「本」がある人にとっては手芸だったり、旅行だったり、スポーツだったり……という具合に、みんなそれぞれの「足りなさ」を感じていたことがわかった。

 

 少しずつ視野が広がると、子どもを保育園に預けている人が「平日の夜こそがしんどいので、子どもと気兼ねなく外食できる場所と機会がほしい」という活動(まちのおやこテーブル https://machinooyako.com/)を始めていることも知った。

 保育園のお母さん方とはなかなか出会う機会がなく、ときどき伝え聞く「保育園ママの悩み」と自分のしんどさには隔たりがあるように感じていた。しかし、直接話してみれば、自分の時間が持てず疲弊している点ではほとんど同じだった。

 暗くなってから外に出ることがなかったので、平日夜に子どもも大人もゆっくり外食できるなんて夢のようだったし、子どもも尊重され、「まちの大人みんなで子どもを見ていこうよ」という在り方には大きな刺激を受けた。

 

 チームははがよむ結成

 

 子どもを通して新しく出合った人たちに、子どもの話ではなく、思い切って自分の話をしてみたら、事情は違えど、かなり多くの人が親になってしんどさを抱えていることを知った。そして、解消するためにすでに動いている人がいることが見えてきたし、ボランティア活動センターの助成金など、人のために動く人をサポートする仕組みがあることもわかってきた。

 何かできそうな気がしてきたし、話せば話すほど「やってみてほしい」「まずはやってみればいい」と背中を押してもらえた。

 

 そんなこんなの3年を経て、子どもが小学校に入学すると同時に、私は「本が読めない」話を聞いてくれた友人数人に声をかけ、これからやってみたいことを話し、それぞれのやってみたいことを聞き、仲間に入ってくれないかと相談した。

 こうして、プロジェクトチーム「ははがよむ」が生まれたのだった。