お母さんは本を読む時間がない

”ははがよむ” あおきともこのブログ

2.ママ友は、うちに来て雑誌をむさぼり読んだ

「本読みたいー!」

 

 母になって、自分がこんなに本を読みたくなるとは、こんなに読めないとは、思ってもみなかった。

 

 産前の世界と産後の世界は、同じ世界のはず。産前と同じ家、同じ町に暮らしているのに、赤ちゃんと動く場所には育児情報しかない。子どものことしか、ない。そんな風に思えた。

 

 「子どもから目を、心を、一時も離してはいけない」という強迫観念にも近い思いが、私に「自分のためのもの」を見させなかったのもあったと思う。ともかく、そのころの自分は「子どもを連れていける場所にあるのは、子どもの情報ばかり」と憂いていた。

 

 ある日、仲良くなったママ友が子どもと一緒に家に遊びに来た。仕事柄、本や雑誌が集まりやすかった我が家で、子どもたちがじゃれ合う昼下がり。おしゃれな彼女は、言った。

 

「一瞬でいいから、バーッと雑誌見せてもらってもいい?」

 

 「本はあまり読まないけど、写真集や雑誌は大好き」という彼女は、ファッション誌をむさぼり読んでいた。“ママ友たち”と一緒にいるときに一人で雑誌を読んでいる人なんて見たことなかったけれど、彼女の姿を見て、私はとても嬉しかった。「そうだよね!!」と。

 

「あーあ、少しでもいいから自分中心で本とか雑誌とか読みたい」

「こんな強い欲求がここにある。これは、ニーズってやつだ!」

 

 そう気づいたとたん、私はいてもたってもいられなくなった。子どもを持つまで思いつきもしなかったけれど、このニーズは絶対に自分だけのものではない。そんな確信をもって、私は「何かできないか」と考え始めたのだった。

  

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 ところで、これまでの私の思いの丈を読んで、「そんなに読めない?」と不思議に思う方もいるのではないだろうか。実際、子どもを産んだ後だろうが読書を続けていたという友人もいる。「育休後の通勤電車が貴重な読書時間だった」という人もいたし、子どもと絵本を読むことで十分満たされた人もいる。「これまでは本を読まなかったが、子どもと絵本を読むようになり、図書館に来ることが増えて自分の本も読むようになった」という人だっていた。

 

 ははがよむ のイベント参加者へのアンケートで「産前産後で自分の本に触れる機会が変わったか」を聞いたところ、大部分の方が「減った」と回答したが、子どもの月齢やその人の読書習慣などにより「不都合」のバリエーションは多岐にわたり、数値でまとめることはできなかった。

 今後、そうした細かな要素も含めた大規模なアンケートをとってみたいという思いもあるが、数値では表れない、切実な「声」は大変貴重だ。

 

「子どもが寝た後に読もうと思っても、寝てしまう」

「絵本と育児書ばかり読んでいる。自分の本も読みたい」

 

 以前は月に数冊読んでいた人が、乳幼児の子育てをしている現在は0冊になったり、年に2冊になったりしている。

 

 どんなときに本に触れたいと思うか、という問いの回答を見返すと、胸がしめつけられる。

 

「子育てにつかれたとき」

「リフレッシュしたいとき」

「知識を得たいとき」

「自分を変えたいとき」

「子どもがなかなか寝付かないとき」

「悩んでいるとき」

「別の世界を味わいたい、浸りたいと思ったとき」

 

 本という奴の懐の深さを思わずにはいられない。

 私は学生時代から気の向くまま、好きなときに本を読んできたが、思うように本を読めなくなって初めて、自分はなぜ本を読むのかを考えるようになった。